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能勢「人形浄瑠璃」への誘い

「おおさかのてっぺん」というキャッチフレーズでおなじみの能勢町は、その名の通り大阪府のいちばん北に位置します。自然がとても豊かで、空気もおいしく感じます。能勢町は近年、アートフェスの舞台になっていたり、テレビ番組でお試し移住をする様子が取り上げられたり、最近ではキャンプ目的で訪れる方も多く、なかなか注目度の高いエリアなのです。

(1)謎の萌えキャラ登場

大阪市内から阪神高速池田線と一般道を使って、車で走ること約1時間。

本日は「能勢町」にやってまいりました。

 

「おおさかのてっぺん」というキャッチフレーズでおなじみの能勢町は、その名の通り大阪府のいちばん北に位置します。自然がとても豊かで、空気もおいしく感じます。

能勢町は近年、アートフェスの舞台になっていたり、テレビ番組でお試し移住をする様子が取り上げられたり、最近ではキャンプ目的で訪れる方も多く、なかなか注目度の高いエリアなのです。

(のせでんアートライン http://www.noseden-artline.com/2021/ )

さて能勢町に足を踏み入れますと、あるキャラクターがちょいちょい目に映ります。

ズバリ、萌えキャラですね。

あちらにも、こちらにも…。


このカワイコちゃん達が気になりつつも車を走らせていると、ある建物からひときわ強い「萌え」を感じるではありませんか。


「淨るりシアター」と書いてありますね。

思い切って館内に足を踏み入れると、あの彼女たちが出迎えてくれました。

彼女たち、左が「お浄」、右が「るりりん」といいます。


能勢町公認キャラクターとして、イベントへの出演やインターネット等の様々な媒体で能勢町のPR活動をされているのだそう。

今はコロナ禍終息を願って、アマビエのコスプレをしていますね。全身ピカピカに光っています。

さらっと足を踏み入れてしまった「淨るりシアター」ですが、一体ここは何をする場所なのでしょうか。

調べてみたところ、どうやら「浄瑠璃」が関わってくるようです。

 

 

(2)そもそも人形浄瑠璃とは

「浄瑠璃」とは、三味線を伴奏とする語り物音楽の一つです。

三味線を伴奏して拍子をとりながら、語り(ストーリー)を聴かせる物語のことを言います。

その起源は室町時代までさかのぼり、琵琶法師(琵琶を弾くことを職業とした盲目僧)が浄瑠璃風の「雑芸」を語ったことと言われています。


当初は主に琵琶の伴奏で語られていましたが、16世紀の室町時代に三味線が伝来したことにより、以後は三味線が浄瑠璃の伴奏に用いられるようになりました。

また、この時代に誕生した語り物の中で「浄瑠璃物語」という演目がブームになりました。
これは牛若丸と浄瑠璃姫の恋を題材にした物語で、主人公である「浄瑠璃姫」にちなんで、その後にできた語り物を一般的に「浄瑠璃」と呼ぶようになりました。

その後、江戸時代の初期にはあやつり人形劇と結びつき、「人形浄瑠璃」が成立したのです。

なお、浄瑠璃は語りによって物語をリードする「太夫(たゆう)」、人形を操る「人形遣い」、三味線を奏でる「三味線」で構成されています。

 

(3)「能勢の浄瑠璃」の特徴

さて、次は能勢の浄瑠璃の歴史について。

時は江戸時代の文化年間(1804~1817)。
能勢に住む村人が、大阪で大流行していた浄瑠璃の修行を積み、能勢に戻り活動を始めました。

すると、彼に弟子入りをする者、大阪で修業を積む者が次々と現れ、能勢で浄瑠璃を楽しむ文化が広まっていきます。

これが能勢の浄瑠璃文化の始まりです。以来、農業のかたわら、土地固有の芸事として浄瑠璃の歴史が育まれていきました。

そんな能勢の浄瑠璃には、独特の特徴があります。
それは、「おやじ制度」と呼ばれるしきたり。

「おやじ」とは家元のことで、弟子を5、6人養成して後継者の育成を行います。
「おやじ」は世襲制ではなく、門人から新しい「おやじ」を選出し、数年のサイクルで世代交代が図られるシステム。

こうすることでそれまで浄瑠璃とは縁のなかった「おやじ」の周りの町民を浄瑠璃の世界へと誘い込み、浄瑠璃人口の拡大に繋がっているというわけです。
現在でも能勢町には約200名の語り手が存在します。

農閑期に師匠からマンツーマンで稽古を受けて身につけてきた能勢の浄瑠璃は、庶民によって創られ、伝え続けられてきた文化であると言えます。
ちなみに現在の能勢町長(R3.5月現在)も、浄瑠璃で三味線弾きを担当されていたとのこと。

 

(4)「淨るりシアター」の誕生

そして能勢町では地域の財産として浄瑠璃文化を守り育て、さらに発展させるため、1993年に「淨るりシアター」がオープンしました。
人形浄瑠璃の公演を行う「芝居小屋」だけでなく、大物アーティスト(!)のコンサート等も開催されており、地域住民の文化・芸術活動の拠点にもなっています。

また1998年には、人形・囃子を加えた「能勢人形浄瑠璃」が淨るりシアタープロデュースによりデビュー。


人形首(かしら)、人形衣裳、舞台美術、演目(『能勢三番叟』『名月乗桂木』)などは全て能勢オリジナルということで、全国からも注目されています。

さらに、2006年には能勢町制施行50周年を機に、新たに名称を「能勢人形浄瑠璃  鹿角座(ろっかくざ)」として、劇団を旗揚げ。
所属する座員は年間を通じて行われるワークショップを受けながら、自主練習、依頼公演にと活動の幅を広げています。

 

(5)独自のエンターテインメント性

能勢人形浄瑠璃鹿角座はお馴染みの古典演目だけでなく、現代的な要素を盛り込んだオリジナル演目があることが特徴的です。

例えば、能勢町を舞台にした演目があったり…、


三番叟は珍しい男女ペアだったりと。


ちなみに冒頭で紹介した例の女子たちは、能勢で浄瑠璃をやっている現代の女子高生(という設定)なので、こんな姿で登場したり…、

自分たちがリアル浄瑠璃人形になったりと大忙し。


古典芸能はどうしても難しいもの、堅苦しいものというイメージをお持ちの方もおられるかもしれませんが、昔から庶民の娯楽として発展してきたのが浄瑠璃。
ここでは肩ひじを張らずに楽しめるエンターテインメントへと昇華されていて、多少内容が分からなくても楽しめるものとなっています。

コロナ禍の現在は鹿角座の公演も未定ですが、能勢町には大自然、アート、萌え、栗(能勢の名物です)など観光資源が盛りだくさん。

まだ未体験の方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。
 

おすすめですよ!