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突然ですが、皆さん「3R」って知っていますか?
もしかしたら若い方のほうが、「学校で学んだ!」との声も聞こえてきそうで、この言葉に馴染みがあるかもしれません。
それでは「リユース」「リデュース」「リサイクル」はどうでしょう?
「それであれば、知っている」という方も多いと思います。
では最後に、それぞれの「違い」が分かる方はいますか?
「何だか、環境に良さそうなことは分かるけど、言葉の意味までは…」と思っていませんか?
1つ目のR「Reduce(リデュース)」は、物を大切に使ってごみを減らすことです。
例えば、
必要ない物は買わない、もらわない
買い物する時にはマイバッグを持参する など
2つ目のR「Reuse(リユース)」は、使える物は、繰り返し使うことです。
例えば、
詰め替え用の製品をできるだけ選ぶ
自分が利用していた物を互いに譲り合う など
そして、3つめのR「Recycle(リサイクル)」は、ごみを資源として再び利用することです。
例えば、
正しく分別してゴミ出しをする
ごみを再生して作られた製品を利用する など
日本にはずっと昔からこうした精神があったようです。
時を遡ること江戸時代。
「えっ? 江戸時代から?」と驚かれるでしょうが、まずは江戸時代の農業に関する文献を紐解いてみましょう。
すると、なるほど循環型社会の精神が当時は根付いていたことが伺えます。
鎖国時代であった日本においては、食糧やエネルギーは自給自足が普通の世の中でした。
一例として、ここでは人口とコメなどの関係性を挙げて、当時の様子を見ていきます。
人口3,000万人に対してコメの生産量は3,000万石であり、これは現在では約450万トンに相当します。
当時は一人を一年間養うのに「一石(150kg)」のコメが必要とされていました。
この約450万トンのコメは食用で消費された後、排泄された糞尿は農地の堆肥として利用されていました。
また藁も同等の約450万トンが採れたとされ、そのうちの約50%が同様に堆肥として農地で利用されました。
そして残り30%が「燃料」として使用され、燃焼後の「灰」は洗剤の原料や農地の肥料として再利用されていました。
さらに残りの20%は「草履」の材料となり、使用後には「縄」に戻された後に、これまた堆肥として活用されていた記録が残っています。
江戸時代には「店子の尻で大家は餅を搗(つ)き」という言葉があったほどで、長屋を管理する大家は、借家人が出す糞尿を農家に売って稼いでいました。
その代金総額は正月の餅つき費用に充当できるほどだったようです。
また庶民は、自らが履き古した草履を街道に設置された「草履塚」に廃棄することが共通のルールであり、これを後日、農家が集めて堆肥として再利用していました。
これら循環の仕組みは当時のヨーロッパ人をも驚嘆させたようで、ドイツの肥料学の大家ユストゥス・フォン・リービッヒ(Justus von Liebig)は、「日本の農業の基本は、土壌から収穫物として得た全植物栄養分を完全に償還することにある」と記しており、当時の日本の先進的な取り組みに刺激を受けたとされています。
そう言えば筆者が子どもだった1980年代前半でも、通学路の脇にある畑から何とも言えない臭いが漂ってきて、登下校時には思わず小走りで駆け抜けたことがありました。糞尿を肥料に使っていたと知ったのは少し後になってからでしたが、今から40年ほど前の日本でも循環の精神が残っていたのです。
しかし、こうした工夫や慣習は高度経済成長期を迎え、経済発展と大量消費の時代へと突入する過程で少しずつ、そして確実に崩れ去っていくことになります。
利便性ばかりが重宝され、同時にモノを簡単に捨てる風潮が広がっていったのです。
その結果として、私たちは大気汚染や水質汚染、資源枯渇などの環境問題に直面することになりました。
このような問題の解決に向けて現在、従来の「採る」→「作る」→「捨てる」の直線型から、循環型、つまり地球上の限りある資源を効果的に活用する「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」へ移行する考え方が提唱されており、その手法の一つに「アップサイクル」が挙げられます。
アップサイクルとは、従来であれば捨てられるはずだったモノを、さらにデザインやサービスなどの付加価値を与えてアップグレードすることを意味します。
まさに江戸時代の藁の活用術のように、本来的な利用後にもうひと工夫加え、更なる利用価値を生み出す。
環境問題に直面している現在、モノの価値を無駄なく最大限に活用していく仕組みとして、このアップサイクルに注目が集まっています。
かつては「3R」の精神を大切にしてきた日本。
今後、どのようにアップサイクルの精神を根付かせていけるでしょうか…。
次回は、このアップサイクルについて詳しくお伝えしていきたいと思います。
引用:石川英輔『江戸時代の循環型社会構造と社会資本整備』2002
引用:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h20/html/hj08010202.html (環境省)