映画離れする映画館

映画離れする映画館

「映画とは映画館で観るものだ」
かたくなに動画配信サービスに向けた作品製作を拒否し続けていたハリウッドの超大物監督が、ついにNetflixと製作契約を結びました。劇場と配信の同時公開を行う映画も出てきています。
なぜ映画製作者たちは配信を選択するのか、その理由とともに、新しい形に変容する映画館をご紹介します。

出典 https://omacinema.com/

(1)盛り上がる動画配信市場

先日、こんなアンケート結果が公表されました。

「映画館での公開と『同じ値段・同じタイミング』でオンライン配信されたら、あなたはどちらの方法で観たいと思いますか」。

ジャンルによってバラつきはありますが、その差はほとんどありません。
GEM Partners調査によると消費者がSVOC(定額動画配信サービス)に支払った金額は2019年の2,392億円から2020年は3,238億円(前年比+33.1%)に成長し、2025年には6,538億円に到達すると試算されています。配信サービスを利用して映画を観る機会は今後ますます増えていくでしょう。

観客が配信へ移行するとともに、映画製作者たちも配信サービスでの作品提供を始めています。最近では、スティーブン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシ、アルフォンソ・キュアロン、コーエン兄弟など世界的に成功した映画製作者たちも参加し始めています。
映画館公開でも十分に活躍できそうな彼らがなぜ、配信サービスを選択するのでしょうか。
以下のような理由が挙げられます。

1.コロナ渦における長期の劇場封鎖
アメリカでは2020年3月から約1年間、コロナ渦の影響により映画館が休業状態に陥りました。公開される場所を失った作品は製作費回収のために配信サービスへ売り渡されることになりました。

2.作りたいものと劇場観客のニーズが一致しない
劇場の観客が期待するものと製作者が作りたいものが一致しない場合、興行収入が見込めないと判断され、資金調達が難しくなります。しかし配信サービスでは世界中に何億人もの「会員」が存在するため、多種多様な作品を受け入れる器と多額の資金が用意されています。

3.興行成績が公開されない
配信サービスでは興行成績が公開されないので、「人気がないから面白くない」というバイアスはかかりにくく、失敗作という烙印を押されることもありません。逆に良作であれば口コミやアクセス数も増え、観てもらう機会も増えます。

これらの理由から、作り手たちは自由に作品作りができる場所を求めて配信サービスの世界へ飛び込んでいるのかもしれません。
今後さらに配信サービスが拡大して映画館との棲み分けが進むと、それぞれの特性に合うよう「映画館用のコンテンツ」と「配信用のコンテンツ」が区別されて製作されることでしょう。

(2)でも「映画館離れ」は起きていない!?

一方で、配信サービスの急伸により映画館離れが進んでいると思いきや、データを見ると昨年を除けば数字は右肩上がりで好調にみえます。
確かに新型コロナウィルスの影響で2020年の春頃から外出を控えるように呼びかけられ、昨年の入場者数や興行収入はグッと落ち込みました。

ところが、スクリーン数や興行収入は増加しています。
これは、都市部の再開発に伴う大型商業施設のオープンラッシュが関係しています。とりあえず商業施設には映画館を入れるという最近の流れにより、新しく開業する商業施設には映画館が誘致されます。大手興行会社も「他社に取られるくらいなら…」と採算度外視で参入を繰り返していく結果、スクリーン数がどんどん増えているのです。

また、「ステイホーム」が呼びかけられた昨年は、「映画は映画館で観たい」と思う割合もグッと伸びました。
この現象は、銭湯に近いものがあると感じます。
家にお風呂はあるけれど、たまには広々としたお風呂にゆっくり浸かりたい、と銭湯に行くような感覚かもしれません。

スクリーン数も十分にあり、興行収入も増えている。
この結果から、一見すると映画館と配信サービスはうまく共存しているようにも見えます…。

(3)映画館から映画娯楽施設へ

しかし、入浴に特化した銭湯が少しずつ姿を消して行ったように、「映画」だけを流す映画館は生き残りが難しくなっています。

ほとんどのシネコンは映画鑑賞の前後に食事や買い物ができる大型商業施設の中にあり、映画を複合的に楽しめるようにしています。他にも映画館としての強みを生かしながら娯楽性を追求し、様々な工夫を行う映画館が増えています。

【映画をイベント形式で上映している代表例】

1.応援上映
ミュージカル映画を一緒に歌ったり、登場人物に声援を送るなど、鑑賞中に声を出して楽しめる上映形態。

2.爆音上映
通常よりも大きな音量で上映し、上質な音響を最大限の臨場感で楽しむ上映形態。


【非映画コンテンツ(ODS)の上映】

1.人気劇団のステージやライブ、スポーツイベントの中継
2.人気劇団のステージや歌舞伎公演を期間限定上映
チケットが入手困難であったり、遠征ができなかったりと、行きたくても行けなかった公演を映画館の大画面・大音量・高音質で体験できる。
演劇やバレエの公演では幕間も設けられているので、現地と同じ時間を共有しているように感じられる。周囲のお客さんと盛り上がることができるのも魅力の一つ。

【大迫力×ソーシャルディスタンス】
今年パリで開館予定の「Ōma Cinema」はソーシャルディスタンスと没入感を目指した斬新な座席配置が注目の映画館。

出典 https://omacinema.com/

【もはや『箱』は必要としないケース】
ヘッドフォンを装着し、映画を鑑賞するサイレントシアター®が東京・代官山に2021年6月オープン。
周囲への騒音を気にする必要がないので上映中も窓を開けているそうです。この音響システムを利用すれば住宅街の公園や河川敷など、あらゆる場所に映画館が出現するかもしれません。

(4)未来の映画館

最後に、未来の映画館はどうなるか少しだけ妄想したいと思います。

1.仮想空間の中の映画館
映画「レディプレイヤー1」のように人々が1日の半分を仮想空間の中で過ごす時代がやって来たとき、映画館はさらにその姿を変形させるでしょう。
VR内に作られた映画館で「没入感」「非日常感」「他者との感情の共有」は十分に得られます。近年、他者とのリアルな身体接触を好まない世代がどんどん増えていますし、他人の匂いや息遣いに過敏に反応したり、嫌う人も増えています。仮想空間内の映画館であれば、他人の動物感を感じることもありません。実際、昨年ゲーム空間で行われたアーティストのライブに1,200万人の観客が訪れて話題になりました。
近い将来、仮想空間上に映画館が誕生するかもしれません。

2.カフェ的な映画館
現代人が受け取る情報量は江戸時代の「1年分」と言われていますが、未来はもっと情報過多な状態だと思います。となれば約2時間の映画を観る時間や集中力も無くなるでしょう。映画館で公開される映画は15分程度のめちゃくちゃ面白い短編が増えるはず!?
15分程度であればお昼休みにサクッとリフレッシュ的な映画館の使い方ができると思います。

3.火星に映画館
いつの日か人類が火星に移住するとなれば、そこにもエンターテインメントは必須です。火星の映画館封切り作品は『マーズ・アタック!』がいいですね。
シアター内でポップコーンを食べるとフワフワと中に浮いているのでしょうか。

さて、未来の映画館はどうなっていますか、楽しみです。

クリエイティブ担当

A.i

日々様々なことに思いを馳せながら、広告デザイン制作に没頭する。将来の夢は映画館運営との噂。

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