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ハチャメチャに忙しいとき、「自分がもう一人いたらなあ」なんて思うことがありますが、一人どころか複数の「私」が存在し、代わりに働いてくれる未来がすぐそこに来ているかもしれません。
AIの研究・利活用がブームとなっていますが、個人をデジタル空間上で再現する「デジタルクローン」という技術が私たちの生活を変えるかもしれない、と注目されています。
Amazonの倉庫ではスタッフが商品を棚に取りに行くのではなく、商品がスタッフのいる所に移動してくるようになったそうです。私たちの職場にどんどん人工知能が活躍する場所が増えてきていますすね。今回のテーマであるデジタルクローンは人工知能を応用した技術なので、本題に入る前に人工知能について少し触れておきます。
2015年に総務省が行った人工知能に対するイメージ調査では下記のような結果が出ました。
日本で一番多かった人工知能に対する印象は「コンピューターが人間のように見たり、聞いたり、話したりする技術」でした。ドラえもんですね。
では、人工知能の研究者が定義する人工知能とはどういうものでしょうか。
大まかには「知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と説明されていますが、研究者によってその捉え方は下記のように様々です。
では、人工知能は具体的にどんなことができるのでしょうか?
大きく分けて3つの機能があります。
①識別、②予測、③実行です。
アイデア次第ではありとあらゆる産業分野で活用できそうです。
さらに、人工知能技術は進化し続けており、生産性や安全性、コスト面を考慮し、AIを導入する企業も増えています。
下記は人工知能の発展と利活用の進化を表しています。
7年前の予測なので現状とは異なる部分もありますが、次第にコミュニケーションが必要な場面でも人工知能を導入する機会が増えていきます。
人工知能が活用される場が広がると、ニーズも多様化しAIにも個性が求められるようになります。そこで、個々に紐づく情報をもとに、一人一人の考え方、嗜好、行動などを分析、解析したパーソナル人工知能 :P.A.I.(Personal Artificial Intelligence) の研究も本格的になっています。
デジタルクローンもパーソナル人工知能の一種で、ある人物のデジタル化された複製を作り出す技術です。コンピュータやネットワーク上に残された文章・画像・音声などを分析し、その人物の経験・思考・価値観などを再構築します。
そうして複製されたデジタルクローンは、より柔軟で人間らしい会話をすることができるようになり、他者(他のデジタルクローンを含む)とのパターン化されたコミュニケーションを行うツールとして期待されています。
それでは、具体的にどういう業務を任せられるでしょうか?
例えば、メールやメッセージの確認と返信、マニュアル化された電話対応、定例会議の出席、SNSの発信などが考えられます。クラウド上で上手く情報を整理できていれば見積書や資料作成も任せられるかもしれませんね。オフィスワークでは1日の時間の決して少なくない時間をこれらの作業に費やすこともしばしばです。
より柔軟で人間らしい特性を活かせば、介護や感情労働の代替としても期待できます。
介護の現場では話し相手はもちろん、声かけによる行動サポートもできるかもしれません。
営業職のアポ取り電話もデジタルクローンにお任せください。応答している方もデジタルクローンなのでどうぞご安心を。
学校の先生にも朗報です、試験監督はデジタルクローンにやってもらいましょう。
市役所の職員さんもいかがですか、窓口業務を廃止できます。特殊な場合を除いてデジタルクローンに任せましょう。
このように、デジタルクローンに任せられる作業が増えると、1日の時間の使い方が変わるかもしれません。空いた時間を別の業務に充てたり、就業時間を減らして育児や介護、趣味の時間に使ったり、起業したりと多様な働き方が実現するかもしれません。
技術革新は働き方だけでなく、様々な変化を起こします。次は、過去の技術革新の事例を振り返ってみます。
“19世紀における産業革命では、製造業における作業を単純化して再構成することで機械が導入されて熟練工が不要になっており、技術がスキルの代わりになったと言える。この点、イギリスにおける実質賃金が上昇していることから、熟練工の雇用は失われたものの技術的進歩による利益が労働者に分配されたと評価されている。20世紀初頭におけるオフィスの機械化・電化では、事務機器によって業務コストが低下した結果、高度な教育 を受けた事務職員の雇用が増大している。ただし、高度な教育を受けた事務職員の人材供給が需要を上回っていたため、結果としてオフィス労働者の平均賃金は減少している。20世紀後半におけるコンピュータの普及に際しては、コンピュータを使用するコストが急速に低下していったことで、自動化の適用領域が拡大した。この間、重要性が高まったスキルは“複雑なコミュニケーション”と“専門的な思考”であり、重要性が低下したスキルは“定型的な手作業”や“定型的な認識業務”であるとされる。また、IT導入の活発な産業で知識集約型(非定型分析)業務が増大し、定型業務が減少していることが示されている 。”
引用:ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究、株式会社野村総合研究所、平成28年
この流れを見ると、働き方だけでなく、働き手(働く人のスキル)も変化していることが伺えます。人工知能やデジタルクローンの活用によって働き手が多様化していくのでしょう。現在、定型的な手作業や定型的な認識業務を得意とする労働者は限られた職種での就業、あるいは就労支援などに頼っている人も少なくありません。
しかし、人工知能が導入されることで、複雑な計算やコミュニケーションは人工知能が担い、定型的な手作業や認識業務は人間が行う、という業務も生まれる可能性があります。そうすれば現在は就職することが難しい職種でも活躍の場が広がるかもしれません。働き手が多様化すれば人材の確保がしやすくなり、新しいアイデアが生まれやすくなるメリットもあります。
最後に、人工知能やデジタルクローン技術によって働き方や働き手が多様化した時、私たちはどう適応できるでしょうか。
オックスフォード大学は「2030年に必要とされるスキル」という論文で120種類のスキル・知識・能力をランキング化したデータを発表しました。
人工知能・多様性・ソーシャルメディア の影響が色濃いこのランキングを見ると、ITなどの技術よりも「コミュニケーション」「創造性」そして「教育」が鍵になっています。現在すでに注目され始めているので、8年後には標準のスキルになっているのかもしれません。
私たちの仕事に関わる人工知能とデジタルクローン。
その動向から目が離せません。
余談ですが、イーロン・マスクは人工知能が悪意を抱くようになる潜在的可能性について恐怖を抱いており、漫画「攻殻機動隊」のように脳内にマイクロチップを埋め込み、念じるだけでコンピュータなどを操作できるようになるデバイスの開発をめざしているそうです。
次回はついに、「意識」に迫るか、迫らないか。
それではまた!
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